新たな事業を立ち上げる困難-高橋ヒロシ『WORST外伝』
映画化もされた『クローズ』の続編に位置づけられる高橋ヒロシの『WORST』。その外伝では、シリーズの主要なグループである「武装戦線」の結成当時について回想形式で描かれる。
初代「武装戦線」は4人の男によって結成された。初代の頭となる鈴木恵三は、その当時では当たり前のこととされていたにもかかわらず、既存のチームに入ることを拒み、自由を勝ち取るために仲間に声を掛け、自分たちのチームを結成する。たった4人のチームは、周囲の大きなチームに散々痛めつけられる。特攻服を着た男たちが自宅に押し掛ける描写もあり、相当怖ろしい状況に陥る。
彼らはそれでも自分たちの旗を降ろすことを良しとせず、ずたぼろになりながらも、街道に足を踏み固め、襲いかかる敵を不敵に待ちかまえる。なんとか仲間も8人となり、ようやく相手チーム「百鬼」の頭に存在を認められ、煙たがりながらも周囲のチームたちは「武装戦線」がすでに立ち上がってしまったことを承認するほかなくなる。
起業するひとたちとその姿をだぶらせながら読んでいたが、何かを始めるには、鉄の意志と頼りになる仲間が必要なのだ。初代「武装戦線」の8人は、ただつるんでいたわけではなく、個人としてもタフな連中が集まっている。そして、後先を考えずにただ行動するのみといった荒々しさも不可欠なのだろう。
『クローズ』・『WORST』の愛読者にとってはおなじみの人物が、時代の設定上とても若々しい姿で登場することも本作の魅力だろう。現在の「武装戦線」はすでに7代目である。つまり、単純に1年ごとに代替わりがあるとして、約7年前の時代を描いているわけだ。大人にとっての7年はそれほど長い期間ではない。だが、このマンガの登場人物たちはほぼ高校生で、その7年前は彼らが小学生の頃の話なのだ。
そして、7年後にまだ「武装戦線」があり続け、その存在に憧れていた者たちが7代目の「武装戦線」で活躍している。もし初代のメンバーが周囲の圧力に屈していれば、現在の「武装戦線」は存在しない。その当たり前のことが、うっすらと歴史を意識させる。個人的な動機で必死に始めたことが、気づかないうちに歴史となる。それは、どれだけ我々が凡庸であったとしても、決して無縁な事柄ではないのだ。
- 読書ノート
- 2010年05月19日
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